匠は喫茶店に営業に行くが
「うちのミックスジュースがまずいって言うんか」
「シロップなんて邪道や」などと言われ、なかなか採用してくださる店はない。
視点を変え居酒屋に営業に行った。
「居酒屋でミックスジュースなんて売れるはずがない」と断られるが、匠は何度も足を運び力説する。
「そこまで言うなら置いたるわ」
匠の諦めの悪さが功を奏した。
居酒屋でミックスという物珍しさとミキサーを使わず時短できるにも関わらず、お客様からの「うまい」という評価を得ることができ、その店のヒット商品となった。
注文が増え、毎日のようにミックスジュースシロップを製造し休日に製造することも日常茶飯事だった。
それから約20年、ここで問題が発生する。
受注に対して生産がおいつかない。
弊社独自の製法でひと手間も二手間もかけることにより『うまさ』を引き出しているので大量生産ができない。
嬉しいことではあるが、生産と注文のバランスが取れなくなってしまった。
どこかの作業を抜いたり簡易化することで生産性は増すが、味が劣ってしまう。
味に妥協はしたくない。
「味に妥協はできない」「大量生産はできない」とできない尽くしとなってしまった。